
2025年9月29日に報道された、日産自動車株式会社が、保有する横浜マリノス株式会社の74.58%の株式を売却するWebニュース記事のまとめ。
(´-`).o0(2025/10/3~2025/10/8分)
日産自動車株式会社のニュースリリース(2025年10月3日)
2025/10/03 横浜F・マリノスについて
日産は横浜F・マリノスの筆頭株主であり続けます。
私たちは横浜F・マリノスの成長を支え、財務的な持続可能性を高めるため、長期的な戦略の一環として、株主構成の強化について積極的に検討しています。横浜F・マリノスは日産の伝統と価値観、地元を大切にする姿勢の象徴であり、私たちは今後もチームの目標達成や将来の発展を支援し続けます。今後も日産は、地元である神奈川県、横浜市に対して、引き続き貢献していきます。
私たちは事業の安定性を確保し、強固な基盤を構築することで、従業員やパートナーを支援し、地域社会に貢献していきます。
2025年10月3日(金)の報道
2025/10/03 【横浜】身売り否定のコメントに横浜市の担当者「うれしい話で願ったりかなったり」 – J1 : 日刊スポーツ
日産自動車がサッカーJ1横浜F・マリノスの運営会社の身売りを否定するコメントを発表した3日、本拠地がある横浜市から喜びの声が上がった。市の担当者は「ニュースで知った。うれしい話で願ったりかなったりだ。横浜に居続けてもらえるかもしれない」と期待を寄せた。
発表に先立ち、山中竹春市長は、日産のイバン・エスピノーサ社長宛てにマリノスの活動継続の要望書を横浜商工会議所の上野孝会頭らとの連名で送付したと明かした。記者団に「市民の健康増進や経済発展に大きく寄与してきた。地域の総意を伝えた」と述べていた。
2025年10月4日(土)の報道
2025/10/04 日産、一転 横浜FMの「筆頭株主であり続ける」…声明発表 複数社に運営権売却打診も地元からは反対の声 保有株式は一部売却も – スポーツ報知
日産自動車は3日、サッカーJ1の横浜FMを運営する横浜マリノス(横浜市)の株式売却検討に関し「筆頭株主であり続ける」との声明を発表した。約75%のマリノス株式を持ち、運営権の売却を検討しているとの9月29日付のスポーツ報知の報道後、初めての対応で「マリノスは日産の伝統と価値観、地元を大切にする姿勢の象徴であり、私たちは今後もチームの目標達成や将来の発展を支援し続けます」などと記した。
1972年の日産自動車サッカー部創部から、地域に根ざした名門クラブを巡り、横浜市の山中竹春市長はこの日、日産に対し、市内での活動を継続するよう要望したと明らかにした。同市によると、日産のイバン・エスピノーサ社長宛てに「マリノスの活動が今後も横浜で継続されることを強く望む」とする要望書を、横浜商工会議所の上野孝会頭らとの連名で送付。記者団に「市民の健康増進や経済発展に大きく寄与してきた。地域の総意を伝えた」と話した。
横浜FMの運営権については、家電量販店大手のノジマ、IT大手など複数社に売却を打診したことが明らかになった。日産出身で同クラブの中山昭宏社長(58)も身売りが検討されていることは否定しなかったが、販売店へのクレームなど「本業にも多大な影響があった」と日産関係者は漏らす。地元住民やサポーターから反対の声が上がっていた。売却額は十数億円規模とみられ、日産の事業規模から見ると財務面の効果は限定的との見方もあり、声明でひとまず幕引きとした。
「今後も日産は、地元である神奈川県、横浜市に対して、引き続き貢献していきます」と表明した。業績不振で保有資産の見直しを図っており、クラブの「成長を支え、財務的な持続可能性を高めるため、長期的な戦略の一環として、株主構成の強化について積極的に検討しています」と、保有する一部株式の売却を示唆した。
2025/10/04 【横浜】日産の身売り否定声明受け、中山社長「私は日産でなく、マリノスの人間。きちんと守る」 – J1 : 日刊スポーツ
横浜F・マリノスの中山昭宏社長(58)が4日、親会社の日産自動車が前夜に「日産は横浜F・マリノスの筆頭株主であり続けます」と声明を出したことを受け、アウェーの柏レイソル戦を前に試合会場でメディアの取材に応じた。
中山社長は「昨夜、日産自動車からリリースがありましたけど、現時点で我々のところにあれ以上のものは届いていない」と断った上で、質問に応じた。
日産はマリノス運営会社の親会社で、株式の約75%を保有している。
3日の声明では「マリノスの筆頭株主であり続けます」と約束した上で、「マリノスの成長を支え、財務的な持続可能性を高めるため、成長戦略の一環として、株主構成の強化について積極的に検討しています」「マリノスは日産の伝統と価値観、地元を大切にする姿勢の象徴であり、私たちは今後もチームの目標達成や将来の発展を支援し続けます」と強い使命感を持って誓った。
9月29日、世間に衝撃を与えた「身売り検討」の一報からわずか4日。IT大手など少なくとも3社以上と接触したと報じられる中、日産は事態の沈静化を一気に図った。
中山社長は前日夕方に日産側から声明の発表を伝えられたという。今回のメッセージを受けての感想を問われると、こう話した。
「まず一点目、リリースの中に日産自動車が横浜F・マリノスの筆頭株主であり続けるというコメントがあったと思いますけど、そこに日産の親会社としての強い思いがあるなと感じています。我々としてもしっかりと、重く受けとめているところです。
もう1点は、株主構成について積極的に検討していくとありましたが、ここについては日産自動車が今後検討していくと思われますので、我々としてもきちんと提案していくというふうに思っています。
三点目は、日産自動車が我々のことを象徴と言ってくれていますので、我々クラブの原点は日産自動車サッカー部なので、そこから50年以上の歴史で培われてきた我々の価値、ブランド、アイデンティティーを守り抜くという基本的な姿勢は変えずに引き続き、その旨を日産自動車に伝えていこうと考えています」
2025年10月7日(火)の報道
サッカーJリーグ屈指の名門、横浜F・マリノスが揺れている。先週来、親会社・日産自動車が、クラブの身売りを検討しているとの報道が相次ぐ中、10月3日、当の日産が声明を発表。「今後もマリノスの筆頭株主であり続ける」と身売りを否定する一方で、保有する株の一部売却を示唆したのだ。マリノスと言えば、1993年発足時からJリーグに加盟する「オリジナル10」のひとつで、リーグ制覇5度、30年以上にわたり、1度もJ2に降格していない日本サッカー界を代表するクラブだ。しかし、現在、チームは17位とJ2降格の危機に沈み、それに加えて今回の身売り騒動。一体、何が起こっているのか。
— 6700億円の赤字
マリノスの身売り騒動は、言うまでもなく、日産自動車の経営悪化が原因だ。世界的な販売不振により、日産は昨年度の決算で過去最大規模の6708億円の赤字を計上。今年度の第一四半期の決算でも1158億円の赤字となっている。イバン・エスピノーサ社長は経営再建を進め、その中には、2万人の人員削減や、追浜工場の閉鎖や本社ビルの売却案なども含まれている。“痛み”を伴う計画だけに、サッカークラブの運営に、従前のように注力している状況ではないのかもしれない。
そんな中、先週になって、日産自動車が、保有するマリノスの株約75%の売却を検討しているとの報道が相次いだ。売却先についても、同じ横浜市に本社を構える大手家電量販店「ノジマ」の名が報じられた。マリノスの中山明宏社長が報道を明確に否定しなかったこともあり、身売りは既定路線――そう見られていたところ、10月3日になって、突如、日産が声明を発表。今後も「筆頭株主であり続ける」として「身売り」を否定し、合わせて「株主構成の強化について積極的に検討」と、株の一部売却を示唆したのだ。
これを受けて、マリノスサポーターからは安堵の声が上がると思ったが、意外にもコアなファンに聞くと、
「むしろ日産が手放してくれたほうがありがたかった」
「日産が親会社のままでは強くなれない。今からでも手放してほしい」
「自分たちはマリノスファンであって日産ファンではない」と落胆の声しきりなのである。
— コーチが突如辞任
2022年はリーグ優勝、2023年は2位と好成績を収めながらも、ここ数年、マリノスの内情は“死に体”といってもいい状況が続いていた。
「本社、球団、スタッフ、選手の一体感が薄れていた。みなが向いている方向がバラバラで、サッカーへの熱量は下がっていた」(マリノス関係者)
それが昨季以降の成績にダイレクトに反映している。昨季は9位、今季に至っては17位(第33節終了時点)と低迷。降格圏は18位以下であり、危機が現実味を帯びている。
「今年だけで監督が2人解任され、既に3人目です。この夏には、昨年まで2年連続で得点王に輝いていたFW、アンデルソン・ロペスら3名のブラジル人選手を放出した。もともと彼らはチームの方針に不満を抱いていましたし、高額年俸もネックになったと見られていますが、主力が放出されては、チーム状態は上向きません。こうした状況に責任を感じたのか、OBで元日本代表のGK、松永成立氏が、20年近く務めていたコーチを突如辞任するという異例の事態も起きました。スポンサー獲得も難航し、営業が苦労しています」(同)
フロントもガタガタだった。
「昨年は、シーズン中にもかかわらず、中山社長が浦和レッズの強化担当者だった西野努氏をSD(スポーティングダイレクター)に据えるべく引き抜いた。これにこれまでの強化スタッフが猛反発し、退職した者も出たほど。その西野氏も昨オフにはブラジル人選手を切ろうと画策し、対立を招きましたし、彼が連れてきた監督はことごとく失敗した。そんな騒動ばかりで、あるスタッフは“(任期途中での退任が多く)違約金を最も支払っているクラブではないか”と嘆いていたほど」(同)
— 巨額資金でクラブハウスをオープン
マリノスが、日本サッカー界を支えてきたクラブであるのは間違いない。創部は1972年、日産自動車サッカー部が始まりだ。日本リーグ時代、とりわけ1980年代になると、読売クラブと人気、実力両面で覇権を争う強豪となった。加茂周監督や、水沼貴史、木村和司、前出の松永の各選手ら、日本代表を支える人材を輩出してきた。
1993年にJリーグが発足した際には、スタートから参入。1995年に初優勝を遂げると、以来、優勝5度は鹿島アントラーズに次ぐ2番目の回数だ。同じく鹿島と共に、一度もJ2に落ちたことがない球団である。
かつての日産自動車はチーム愛に満ち溢れていた。日本リーグ時代、スタジアムには日産の社員が押し寄せ、「我がチーム」に声援を送った。2006年、本社を銀座から横浜に移転した際には、巨額の資金を投入し、みなとみらい地区に「日本一」と言われたクラブハウス「マリノスタウン」をオープンさせるなど、全面的に支援をしてきた。人気、実力共にトップクラスで、「Jリーグの優等生」とも言われたほどである。
— ジプシー状態
しかし、躓きの石はやはり本社の経営不振であった。リーマンショックにより、2008年以降、日産は苦境にあえいだ。年間10億円と言われるマリノスへの資金提供を止めざるを得なくなり、マリノス本体も債務超過に苦しむように。そこで当時のカルロス・ゴーン社長は球団の増資を決断する。2014年、英プレミアリーグの強豪、マンチェスター・シティーなどを傘下に持つ「シティ・フットボール・グループ(CFG)」が約20%の株を取得することになり、パートナーシップ提携を結んだ。ちなみにCFGの親会社はアラブ首長国連邦の投資グループ、アブダビ・ユナイテッド・グループである。
これ以後、マリノスはCFGルートで有力海外選手を獲得できるようになり、2019年、2022年とリーグ優勝を果たした。提携の試みは成功したかに見える。しかし、
「以後、日産側は、監督や外国人選手などの補強はすべてCFG任せになった。最終決断はマリノスの社長が行いますが、このポストには、サッカーに関しては素人な人材ばかりが本社から送られてきている。マリノスは、チームに関わる判断はCFG任せで、とにかく運営を赤字にしないようにすることだけが、クラブの大きなミッションになってしまった」(ベテランのサッカー担当記者)
球団そのものの経営状態は悪くないものの、これではクラブが変質してしまったと捉える向きも少なくなかったであろう。マリノスタウンも2016年に閉鎖され、以降、チームはあちこちの練習場を転々とする「ジプシー状態」となってしまった。長期的な戦略構築の姿勢が遠のき、短期的な経営合理性が全面的に追求されるようになってしまったのである。
— 提携も解消
これと軌を一にするように、OBとの関係も冷え込んだ。Jリーグ発足以降もマリノスは、井原正巳、川口能活、松田直樹、中澤佑二、中村俊輔ら日本代表のスター選手を輩出したが、
「とりわけCFGと提携した後は、彼らと縁が薄くなった。あの中村俊輔でさえ、提携後にCFGの意向で切られてしまったのが象徴的です。それまでは、木村、水沼両氏などOB監督も生まれていましたが、そうした伝統もなくなってしまった」(同)
実際、CFGとの提携後、マリノスの監督はほとんど外国人である。そうした点もあってか、前述のような有力なOBが多数いても、チームの危機に立ち上がろうという人は少ない。
「クラブと絶縁状態になっているOBもいるほどです。あるOBに今回の身売り騒動について聞いたら、“ボロボロの運営をしてきたクラブが悪い”と痛烈に批判をしていたのには驚きました。こうした状況では、ファンもチームに愛着を持ちにくい」(同)
いまなお、外国人監督と並行して、OBが監督に就任する鹿島アントラーズとは対照的である。
「実際に、日産内部で“一部売却”ではなく、“身売り”が検討されていたことは間違いありません」
とは、前出のマリノス関係者。
「買い手企業も3社ほどに絞られている段階でした。方針が急転換されたのは、報道が先行して話が壊れてしまったか、あるいは、金額その他の条件で折り合いが付かなかったのか……。また、地元の横浜市から売却に反対の声が上がったことの影響もあるでしょう。1998年、マリノスは、スポンサーが撤退した横浜フリューゲルスを吸収合併した過去がある。それを密室で行ってしまったため、フリューゲルスサポーターは激怒し、マリノスにも批判の矛先が向いた。その時の苦い記憶もあり、“身売り”から“一部売却”へと方針を変えたのではないか」
— 雰囲気が悪い
先に述べたように、クラブの筆頭株主であり続けるにしても、日産は経営危機のただ中にある。マリノスへの十分な支援は難しい。まして、これも先に述べたように、クラブは現在、降格の危機にある。
「残留争いをしている中での身売り騒動ですから、チームの雰囲気は悪い。フロントも選手たちも浮足立っていて、ゲームに集中できていません。守りを固めてロングパスを前線に送るという、単純なパターンの作戦に終始している。今季は残り5試合ですが、相手は優勝争いに加わる上位チームばかり。降格の可能性が高い」(同)
間の悪いことに、Jリーグは、現在の春秋制(2月~12月)から、秋春制(8月~5月)に移行するため、次のシーズンは「特別大会」となり、3月開幕、5月閉幕の開催でJ1とJ2の入れ替えは行わず、8月開幕、5月閉幕の来々期に突入する。つまり、今季J2に落ちれば、一年半は昇格のチャンスがないのだ。
「現状、マリノスには日本代表選手もいませんし、これでJ2に落ちれば、有力選手はさらに流出していくでしょう。クラブの人気も落ちる。今は黒字のマリノスですが、経営が悪化していくことは確実」(同)
その際、ただでさえ経営難である日産が、クラブにどれだけの支援が出来るというのだろうか。ちなみに、先のCFGとも、この6月でパートナーシップ提携を解消している。
また、株を一部売却するにしても、J2に落ちれば、一気にチームの価値は下がる。一昨年、鹿島アントラーズの親会社で約6割の株を保有していた日本製鉄が、チームの株を約16億円でメルカリに売却したが、
「マリノスの株はそれよりずっと安くなるでしょう。それ以前に買い手が付くかどうか……」(同)
「いっそのこと、日産が手放してくれたほうが良かった…」
サポーターの嘆きが実に説得力を持って聞こえてくるのである。
小田義天(おだ・ぎてん) スポーツライター
2025年10月8日(水)の報道
2025/10/08 横浜F・マリノスの“身売り”報道があぶり出したJクラブの親会社依存体質、「税リーグ」と揶揄される構造問題 日産の経営難でクラブ運営もままならない実態とは | JBpress (ジェイビープレス)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
サッカー、J1の横浜F・マリノスに“身売り”話が持ち上がった。運営会社の約75%の株式を保有する日産自動車が本業の経営不振を理由に、株式の売却を複数の企業に打診していると報じられたのだ。
日産はその後、「筆頭株主であり続ける」との声明を出して否定したものの、株式の一部売却の可能性は残る。
横浜に限らず、Jリーグの有力クラブの多くが大企業のバックアップに依存し、親会社の業績不振は“身売り”へとつながるプロ野球や「企業スポーツ」と同様のリスクを抱える。
一方で、表向きにはクラブ名称に企業名は冠されず、地域との共存共栄が謳われ、スタジアム整備などで自治体から支援を受けて、「税リーグ」とも揶揄される。
名門クラブの身売り騒動は、企業依存の一方で、公金にも頼ってきたJクラブの構造を改めて露呈した。
— 横浜F・マリノスの苦境
日本サッカー界を牽引してきた名門クラブに激震が走った。
横浜F・マリノスは1972年創部の日産サッカー部が前身だ。1993年のJリーグ元年に加盟していた「オリジナル10」の一つで、5度のリーグ優勝の実績があり、過去にJ2降格が一度もない。中村俊輔氏ら数多くの日本代表も輩出してきた。1999年には、出資企業の撤退で消滅した横浜フリューゲルスを吸収合併している。
身売り騒動の発端は、日産の経営不振だ。日本経済新聞によると、同社の業績は、2025年3月期の最終損益は6708億円の赤字で、4期ぶりに赤字へ転落。経営再建は待ったなしの状況となり、世界で2万人のリストラと7工場の削減を進める。
クラブが拠点を置く神奈川県内でも、横須賀市の追浜工場と平塚市にある子会社「日産車体」の湘南工場での生産終了が発表されている。
こうした状況の中、スポーツ事業への影響も必至で、横浜F・マリノスが2014年に資本提携した、イングランド・プレミアリーグのマチェンスターCなどを擁する英シティー・フットボール・グループとのグローバル・パートナーシップ契約を解消。
本拠地・日産スタジアムの命名権も、所有する横浜市に対して、現状の半額以下となる年5000万円での再契約を申し入れている。
— IT大手など3社以上に接触したという報道も
ただし、日産は10月3日、身売り報道について「マリノスの筆頭株主であり続ける」と否定する声明を出した。朝日新聞は、関係者の話として、日産が株の過半数は保有し続けて、クラブの経営権は手放さない方向で検討していると報じた。
日産は一方で「株主構成の強化について積極的に検討している」として一部株式の売却を検討していることを示唆する。
日刊スポーツの10月4日付記事によれば、日産はIT大手など少なくとも3社以上に接触し、横浜市に本社を置く家電量販店大手のノジマなどの感触を確かめていたという。
プロ野球では、親会社の企業名が球団に冠されているのに対し、Jクラブは地域名だけで、企業名をクラブには入れていない。2023年にJリーグのクラブ名称に企業名を認めると一部で報じられたときには、すぐに声明を出して否定している。Jリーグの理念に、地域密着による共存共栄を柱に据えるからだ。
過去には、ヴェルディ川崎(現東京V)の親会社だった読売新聞社で当時社長を務めていた渡辺恒雄氏が、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏と、クラブの呼称などをめぐって舌戦を繰り広げたこともあった。
地域にとっても、Jクラブは大切な存在であることは間違いなく、スポーツ報知が9月29日付でスクープした身売り報道後は、横浜市が存続を要望した。
— Jリーグの実情は「実業団リーグ」
実際のところ、Jリーグの有力クラブの多くは、日産のような親会社の大企業が「責任企業」として運営に携わっている。
日経新聞の9月30日付記事によれば、J1の上位は親会社の強力な支援を受けているクラブがほとんどで、関係者の話として、年10億円以上が広告費などの名目で親企業グループから拠出されていることを紹介する。記事では、Jリーグの実情は、「実業団リーグ」に近い様相だと指摘する。
プロ野球は、国税庁が1954年に出した「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」との通達により、親会社による球団の赤字補填は、広告宣伝費として損金算入することが認められている。そして、この通達は、クラブ名に企業が冠されていないJクラブの親会社にも適用されている。
Jクラブも親会社の経営が傾いたり、経営方針が変わったりすることで、経営権の譲渡も繰り返されてきた。
2004年に楽天がヴィッセル神戸、2018年にはサイバーエージェントがFC町田ゼルビアの経営権をそれぞれ取得し、2019年にはメルカリが鹿島アントラーズの大株主となった。東京ガスのサッカー部を前身としたFC東京も2021年にMIXIが筆頭株主となっている。
プロ野球のオーナー企業に近年、業績をさらに伸ばしたり、企業の認知度を向上させたりすることを狙ってIT企業が進出してきたのと同じ構図だ。
— Jリーグは「税リーグ」
Jクラブは一方で、地元自治体を巻き込んで共同でスタジアムや公共インフラの整備を進めてきた。「税リーグ」と揶揄される所以でもある。
日経新聞の2023年5月19日付記事では、前Jリーグチェアマンの村井満氏が、赴いた地方で「君たちは『ゼイリーグ』だ。どれだけ税金を使うんだ」となじられたというエピソードが明かされている。
例えば、Jクラブが使用する本拠地の多くは、地元自治体が所有している。Jリーグはクラブライセンスの交付基準に、クラブが使用するホームスタジアムの入場可能数(2025年度用の基準では、J1は1万5000席以上、J2は1万席以上)を設けており、これらの競技場整備は、「地域振興」や「Jクラブは地域のシンボル」という建前のもとで、所有する自治体に委ねられる。
そして、Jクラブや関連会社が自治体のスタジアムの指定管理者となり、管理や運営を行っているケースが少なくない。
ANA総合研究所の主席研究員である廣岡信也氏は、こうした実情について、2024年8月30日付の研究レポート「Jリーグは誰のものか」の中で、「いくつかのクラブは自治体所有の競技場の指定管理者として、自己所有の競技場に近い権利を有している」と説明。
「多くの場合は運営管理が赤字になれば、自治体から指定管理料として赤字補填されている」として、「Jクラブは、本体の事業の赤字補填は責任企業から受け、競技場の赤字補填は自治体から受けるという、夢のような構造によって成り立っている」と指摘する。
— 身売り騒動があぶり出したJクラブの問題
ただし、近年は、通販大手のジャパネットホールディングスが親会社となるJ2のV・ファーレン長崎や、元日本代表の岡田武史氏がオーナーを務めるFC今治などのホームスタジアムが「民設民営」によって誕生し、注目を集めている。
サッカーの年間試合数はプロ野球と比べて極端に少なく、自前でのスタジアム整備が難しいとの指摘もあるが、例えば、長崎は試合がない日もコンコースなどを一般開放し、観光スポットとして集客している。
横浜F・マリノスは2024年シーズン終了後に主力選手の流出が続き、今季はJ1で17位(10月4日現在)と低迷する。
日経新聞の記事によれば、選手への報酬などを含む売上原価が52億円を超えるのに対し、マリノスの2025年1月期の純利益は約900万円にとどまり、J1平均(約7000万円)を下回る。チーム編成面においても、またスポーツビジネスの観点からも、今後の見通しが明るいとはいえない。
プロ野球では、親会社が新規参入してきた球団を中心に新たな球団ビジネスに注力して成功を収めつつある。同じ横浜を拠点に置くベイスターズも、DeNAが親会社になってからは観客動員数も激増し、グッズ売り上げなども大きく伸ばした。
経営再建中の日産が、これからの横浜の舵取りを続けることに限界はないのか。Jクラブの問題構造をあぶり出した身売り騒動を、クラブと親会社や地元負担の在り方を見つめ直す機会にしてもいい。
こけまりログ
2025/09/30 日産自動車株式会社が、保有する横浜マリノス株式会社の74.58%の株式を売却するとの報道のまとめ(1)
2025/10/02 日産自動車株式会社が、保有する横浜マリノス株式会社の74.58%の株式を売却するとの報道のまとめ(2)
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